第25回研究例会

2020年9月19日(土)15:00-17:30(オンライン開催)


プログラム 

14:45- 接続 

15:00-05 開会 


15:05-15:50 伊藤敬佑先生報告 「現代フランス児童文学に描かれた「子どもの貧困」」  

昨今フランスでは、「黄色いベスト」運動により、新自由主義社会における経済的格差の問題が、改めて取りざたされている。子どもに目を向けると、特にひとり親家庭の増加を背景に、人口全体における割合(14%)よりも多い5人に1人が「貧困」にあるとされ、「貧困の再生産」の対策が叫ばれている。 一方児童文学でも、「子どもの貧困」を描く作品が少なからず出版されている。だが、その歴史を追うと、その描き方は、第二次世界大戦後の一定期間と、あまり西欧諸国を舞台に「子どもの貧困」が描かれなくなった1980年代の例外的作品、そして2000年代に入り再びこのテーマを描く作品が増加し始めてからの3つの時期で、大きく異なっている。 今回の発表では、第二次世界大戦後のフランス児童文学における、「子どもの貧困」の描かれ方の変遷を追いつつ、現実の貧困状況の議論と対照しながら整理していく。このテーマを考える論点を明らかにするとともに、「子どもの貧困」を描く児童文学の意義を考えたい。 

15:50-16:00 休憩 

16:00-16:30 自己紹介、近況報告  


16:30-17:15 村知稔三先生報告 「独立後のカザフスタン共和国の人口動態と子どもの権利(2)―乳幼児と保育をめぐる現状―」

 カザフスタンの子ども学研究の第2報に当たる本発表は、同国の乳幼児と保育をめぐる現状の特徴と課題に着目して、次の点を明らかにした。 1)出生数は1980年代後半まで増加傾向にあった。それが同年代末から1990年代末にかけて急速に減少し、ピーク時の半分ほどの22万人まで落ち込んだ。その後、出生数は増加に転じ、2006年に30万人を超え、2016年に40万人に達している。2006年以降をベビーブーム期と呼ぶと、それが10数年間、続いている。その結果、乳幼児人口と子ども人口は急増し、多子社会が到来している。 2)教育・保育法制は憲法(1993年)と新教育法(2007年)にもとづいており、そこでは保育制度が教育制度の第1段階として位置づけられている。保育施設は、1~3歳児対象の「保育=幼稚園」、3~6歳児対象の「幼稚園」という長時間保育を実施するものと、2~4歳児、まれに5歳児を対象に短時間保育を行なう「幼児教育ミニセンター」という3つのタイプが多数を占めている。 保育施設数は、ソ連解体の影響で1990年代に9割近く減少し、2000年の1100園余りで最小となった。その後、2000年代から施設数は回復し、2018年には1万園を超えている。1~6歳児の就園率は2000年代中頃から上昇し、2018年には77%になっている。3~6歳児の就園率は95%に達し、ほぼ完全就園の状態にある。 3)保育内容・方法については、国家基準とそれに準拠した単一の保育プログラムが保育現場に適用されている。欧州高等教育圏に2010年に参加したため、初等・中等教育の11年制から12年制への移行と、教育の第1段階としての保育の幼児教育化が進んでいる。保育者は、4割ほどが専門教育を受けており、6割ほどが高等教育を修了している。これらの割合を引き上げることが課題となっている。 


17:15-17:30 諸連絡 

17:30 閉会 

世界子ども学研究会

世界子ども学研究会は、「世界各地の社会・歴史・文化の中の、子どもと青年」を研究対象とした研究会として、2009年にスタートしました。歴史学・教育学・保育学・発達社会学・(児童)文学・音楽学などの諸分野間での、グローバルな学術交流を行なっています。本研究会にご関心のある方は、以下のアドレスまでメールでご連絡ください。 office-children(アットマーク)freeml.com