研究例会

日時:2024年9月21日(土)13:30~17:30

現地会場とTeamsによるオンラインによるハイブリッド開催


会場:グレッグ外語専門学校 自由が丘校

https://www.gregg.ac.jp/

東京都目黒区自由が丘1丁目14-6

東急「東横線」「大井町線」の「自由が丘」駅から徒歩数分


13:30~13:35 開始


研究発表(発表時間30分+質疑応答15分)

13:35~14:20

山口刀也(東北生活文化大学・講師)

朝鮮戦争期の岩国基地拡張反対運動における教師の役割

――「人間の本性」をかけて――

発表者は、基地問題が深刻化するなかでの教師や学校、ひいては教育のあり方を歴史的に考えてきた。本発表では朝鮮戦争期(1950-1953年)の山口県岩国市を舞台とする。この時期、岩国は国連軍の出撃の拠点となった。それにともない様々な問題や被害が発生した。なかでも1952年6月に浮上した岩国基地拡張計画とそれにともなう土地接収問題に焦点を当てる。教師たちが作成した資料、行政文書、地域紙などを用いて、接収にかかわる行政と農民と教師ら労働組合関係者との関係を検討し、教師が果たした役割を考察したい。


14:35~15:20

伊藤敬佑(白百合女子大学・非常勤講師)

フランスにおける絵本・児童文学を用いた「子どもの哲学」の理論と実践

――エドウィッジ・シルテÉdwidge Chirouterと他の実践者との対比から――

本研究発表では、フランスにおける絵本・児童文学作品を用いた「子どもの哲学(Philosophie pour/avec les enfants)」の実践について、その先駆者の一人エドウィッジ・シルテÉdwidge Chirouterの方法論を中心に、その特徴を明らかにすることを目指す。

発表者はすでに第31回研究例会で、フランスにおいて絵本・児童文学が公教育に組み込まれた過程と、「道徳・市民教育(EMC)」の授業内でシルテが実践した絵本・児童文学を用いた「子どもの哲学」の概要について明らかにした。本発表ではそれを発展させ、シルテ以外の「子どもの哲学」の実践者、例えば「子どもの哲学」をフランスに持ち込んだ第一世代の一人であり、シルテの指導教官でもあったミシェル・トジMichel Tozziや、シルテ自身がフランスの「子どもの哲学」の潮流を3つに整理した際に自身と同じ「教育的論点」に分類したアンヌ・ラランヌAnne Lalanneらの理論と実践と対比をしつつ、シルテの手法の特徴をより詳しく把握し、後期に計画している大学での実践につなげたい。


15:30~16:20 各参加者の最近の研究・教育などの短報

発表者以外の参加者が、最近の研究・教育活動について、5~10分程度で話す。


16:35~17:20

太田明(女子栄養大学・客員教授/神戸医療未来大学・特任教授)

ロボット掃除機と〈教育の学習化〉

――ガート・ビースタの〈学習のポリティクス〉批判――

教育哲学者ガート・ビースタによる「子どもの哲学」やP4Cへの批判について拙稿(『ハルシオン』第11号掲載、2024年)で検討した。だが、そこではビースタの現代教育全般についての批判とビースタ自身の構想に触れることができなかった。しかし、この点を明確にしておかないとP4Cへの批判の意味を十分には理解できない。そこで本発表では、〈教育の学習化〉に焦点を当てて彼の〈学習のポリティクス〉批判(=〈教えること〉の復権)という構想を検討する。

17:20~17:30 事務局からのお知らせなど

■ 日時 3 月 30 日(土)13:00-17:00


■ 対面会場 明治学院大学 白金キャンパス15 号館(高輪校舎)3 階研究推進会議室2


■ プログラム

13:00 開始

13:05-13:50 「独立後のアゼルバイジャン共和国の人口動態と子どもの権利(4)

――代替的(社会的)養護の規定と実態を中心に――」

村知稔三(明治学院大学国際平和研究所研究員)

本発表は、南コーカサスのアゼルバイジャン共和国における子どもの権利と保育・教育・福祉の実態に関する一連の研究発表の 4 回目であり、副題にある代替的(社会的)養護(※)を取り上げる。その構成は次のとおりである。「はじめに」で課題の限定や利用する資料などについて説明し、第 1 節で国際的な代替的養護の区分と定義、アゼルバイジャンの制度と法的規定について紹介する。第 2 節では、代替的養護の量的推移と関連政策の動向について検討する。なお、ここでいう「代替的(社会的)養護」とは、保護者がいなかったり、養育できなかったりする子どもを公的責任で社会的に養育・保護するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行なうことを指す(日本のこども家庭庁の定義を修正)。

13:50-14:00 休憩


14:00-14:45 「エカテリーナ 2 世の女子教育にみる啓蒙観

——スモーリヌィ女学院の設立をめぐって——」

櫻井あゆみ (駒澤大学文学部歴史学科 4 年)

エカテリーナ 2 世は、ロシアのロマノフ朝第 8 代皇帝である。彼女はドイツ出身であったにもかかわらず、後世には「エカテリーナ大帝」と呼ばれる存在になった。また、彼女は啓蒙専制君主を自称し、みずからロシア人の啓蒙・教化に乗り出した。その中でも代表的な事業が、1764 年のスモーリヌィ女学院(以下「女学院」という)の創設である。

本発表では、スモーリヌィ女学院が果たした役割から、この女子教育事業が当時のロシアの教育に「先進性」をもたらしていたという評価を、教育的視点と、ロシアの啓蒙主義と子ども観研究の視点から検討する。それを踏まえたうえで、エカテリーナ 2 世が女学院を創設するにあたってどのような啓蒙観を持っていたのか考察していく。


14:45-15:00 休憩

15:00-15:30 近況報告


15:30-16:30 「子どもの法的処遇からみる中世初期家族の変容」

鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師)

本発表は、7 世紀から 9 世紀のイタリア半島で成立したランゴバルド諸法およびその注解書における子どもの法的処遇を分析し、そこから読み取れる家族のあり方とその変容を検討したものである。法典に規定された家族を分析することで、当時の法の従事者達が法的な家族をどのように考えていたかという法理念としての家族を分析することになる。加えて、改訂法と注釈書をみることで、その理念が現実に合わせてどのように法に反映していったのかという実態の家族像の分析にもつながる。またその変容の過程を長期的に追うことで、当時の社会はどのように変容していったのかが明らかになる。つまり、家族の理念だけでなく、その実態をも明らかにすることで、ゲルマン社会から中世社会へ移行していく家族の姿を明らかにする。

16:30-17:00 諸連絡

17:00 閉会

日時:9 月 2 日(土)10:00-17:00

会場:池袋


10:00-10:05 開始

10:05-14:00 第一部 研究発表(発表時間 25 分、質疑応答 15 分)

村知 稔三(青山学院大学教育人間科学部客員教授 )

「独立後のカザフスタン共和国の人口動態と子どもの権利(3)

――代替的(社会的)養護の規定と実態を中心に――」

本発表は、中央アジアのカザフスタン共和国における子どもの権利と保育・教育・福祉の実態に関する一連の研究発表の 3 回目であり、副題にある代替的(社会的)養護(※)を取り上げる。その構成は次の予定である。「はじめに」で、課題の限定や利用する資料などについて説明し、第 1 節で、国際的な代替的養護の区分と定義、カザフスタンの制度と法的規定について説明する。第 2 節では、代替的養護の量的推移を概観し、第 3 節では、代替的養護の実態と課題について考察し、「おわりに」で全体をまとめる。ただ、諸事情による準備不足によって、今回は、発表としては例外的に、全部をお話しできないかもしれない点をあらかじめご理解いただきたい。

(※)保護者がいなかったり、養育できなかったりする子どもを公的責任で社会的に養育・保護するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行なうこと(こども家庭庁の定義を修正)


鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師)

「『グリムドイツ伝説集』にみるランゴバルドの伝説」

近代学校教育が始まる以前、法慣習の子どもへの伝達は、諺、詩、物語などによって行われていた。法慣習や法的象徴行為が子どもへどのように伝達されていたのかを『グリムドイツ伝説集』(第Ⅰ部 初版 1816 年、第Ⅱ部 初版 1818 年)から分析したい。具体的にはグリムが「ドイツ」の伝説の中に組み込んだランゴバルド族の伝説を、パウルス・ディアコヌス 『ランゴバルドの歴史』(790 年前後)やランゴバルド諸法と比較することで、当時のゲルマン史像の一端を明らかにする。そして、そうして形成されたゲルマン像がどのように子ども達に伝えられたのかを検討し、近代学校教育とは異なる伝達行為(特に物語による伝達)が持つ意義についても考察を加えたい。


12:00- 13: 00 昼食

伊藤敬佑(白百合女子大学非常勤講師)

「フランス公教育における絵本・児童文学を用いた 「子どもの哲学」の実践

と可能性」

本発表では、絵本や児童文学を用いた「子どもの哲学」(philosophie pour (les) enfants)のフランスにおける実践状況を、ナント大学教授かつ「子どもの哲学」実践のユネスコ講座も担当するエドウィッジ・シルテ(Edwidge Chirouter)の活動に焦点を当てて報告する。

この活動には、フランスにおける 1990 年代からの「子どもの哲学」の移入と、絵本、児童文学が公教育のカリキュラムに 2002 年に加わったという、2 つの源流がある。まずその 2 つの経緯を整理しつつシルテの立ち位置や独自性を示した上で、彼女がどのように「子どもの哲学」実践に絵本や児童文学を用いているかを明らかにしたい。


14:00-17:00 第二部 稲井智義『子ども福祉施設と教育思想の社会史―石井十次

から冨田象吉、高田慎吾へ』(勁草書房、2022 年)合評会

コメンテーター:板倉孝枝(世界こども学研究会会員)

山口刀也(東北生活文化大学)

井岡瑞日(大阪総合保育大学)


■ 日時:2023 年 3 月 18 日(土)13:00-17:00

■ 会場:オンライン

■ プログラム(発表時間 30 分 + 質疑応答 20 分 = 50 分)

13:00 開会

13:05-13:55 「漫画・絵本から歴史を問う-歴史総合の実践から-」

鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師)

今年度から高等学校において始まった歴史総合は一年目を終えようとしている。現在学校現場では混乱しながらも、次の探究科目へ向けての接続がはかられている。また大学では、歴史総合を入試問題として作成することが、いよいよ現実味を帯びてきた。こうした状況を踏まえ、初年度の歴史総合を振り返り、生徒一人ひとりがどのように歴史的課題と向き合い、考察を導いたのかを総括したい。またその際、フィクションである漫画や絵本という資料を使用して読み解くことの意義と課題についても、実践例を踏まえて考えたい。


13:55-14:05 休憩(10 分)


14:05-14:55 「礼儀作法書における子どもの権利論の萌芽―モンヴェル『子どものための正しい作法』とその歴史的背景から考える」

井岡瑞日(大阪総合保育大学)

フランスの絵本の黎明期を代表する作家、モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルの作品に『子どものための正しい作法』La civilité puérile et honnête(1887)がある。同作は、絵と文との融合という新しい表現スタイルによって幼い子どもに直に礼儀作法を説いただけではない。伝統的な礼儀作法書の体裁をとりつつ、そこで教えるべきとされたブルジョワ的な規範を子どもの無秩序な騒々しさの対極にあるものとして位置づけ、ユーモアと皮肉を込めて描出した作品であったとされる。同作は子どもに対して何を語り、それは当時の一般的な礼儀作法書といかなる点で共通し、相違していたのか。また、同作を出現させた歴史的背景とはいかなるものか。本発表では、この「礼儀作法絵本」がフランスにおける礼儀作法書と子どもの権利史においてどのような意味をもつのかについて検討する。

14:55-15:10 休憩(15 分)

15:10-15:50 近況報告(40 分)


15:50-16:40 「〈子どものための哲学〉とソクラテス的学校

--- ヴァルケミューレ、メーレファンゲン、オストルプガード ---」

太田 明 (玉川大学)

近年、日本の学校教育のなかに哲学対話を導入する動きが高まり、今次の学習指導要領の改訂では、その方向が明確になっている。たとえば『高等学校学習指導要領(平成 30 年告 示)』の「公民」「倫理」では「哲学に関わる対話的な手法」を取り入れた活動を取り入れた 学習の指導が強く打ち出された。また、中学校道徳科の検定教科書には具体的に「探求の対話(P4C)」の進め方を掲載しているものまである。

「哲学対話」と呼ばれる活動が日本で盛んになったのはこの 10 年ぐらいである。P4C(子どものための哲学、Philosophie for Children)は、その創始者であるマシュー・リップマン (Matthew Lipman, 1923-2010)の『探求の共同体』によって広く知られるようになった。ところが 2000 年前後にはすでに P4C や学校教育での哲学対話への批判も登場し、「過渡期」を迎えていたのである。そしてこの批判は、「教育の学習化」への批判(ガート・ビースタ)と関連させられてより明確になっている。

しかし、学校教育に哲学対話や子どものための哲学〉を導入するとは、どのような教育理念・教育思想に基づいて、何をどのようにすることなのだろうか。その一つの例が、私が研究してきたレオナルド・ネルゾンが設立したヴァルケミューレ田園教育舎である。

この発表では、ネルゾンの学校とその継承者たちが 1930 年代にデンマークに亡命して設立した後継学校 —「ソクラテス的学校」− での教育を例として、上述の問題を検討したい。なお、ネルゾンについては『ハルシオン』(第 9 号)、今日の学校教育における哲学対話への批判については『とまり木』(第 6 号)の私の文章を参照していただきたい。


16:40-17:00 諸連絡

17:00 閉会

■ 日時 2022 年 9 月 17 日(土)13:00-17:00(ハイブリッド形式) 

■会場 青山学院大学総研ビル9階の第15会議室 〒150-8366 東京都渋谷区渋谷 4-4-25

(オンライン会場は当会の連絡先office-children(アットマーク)freeml.comまでお問い合わせください)


■ プログラム(発表時間25分 + 質疑応答15分 = 40分) 

13:00 開会 

13:05-13:45 「映画・絵本から歴史を問う-歴史総合の実践から-」 

鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師) 

 今年度から高等学校では新しく歴史総合という科目が始まった。この科目は従来の日本史と世界史が融合され、近現代史を中心に学ぶことになっている。そして生徒一人ひとりが史資料を使い、その特徴を理解した上で、歴史に対する問いの答えを探し、それを表現していくことを目標としている。歴史的課題をフィクションである映画や絵本という資料を使用して読み解くことの意義と課題について、高等学校での歴史総合の実践例を踏まえて考えたい。 


13:45-13:55 休憩(10 分)

13:55-14:35 「独立後のアゼルバイジャン共和国の人口動態と子どもの権利(3)― ―子どもの権利の実態とその保護の動向――」

村知稔三(青山学院大学) 

旧ソ連諸国の 5 つの地域のうち、バルト地域を除いた 4 地域から各 1 か国を選んで、子どもの権利と保育・福祉の実態に関する比較研究を行なうという計画の最後の対象国として、南コーカサス(ロシア語でザカフカース)地域 3 か国のひとつ、アゼルバイジャン共和国を取り上げた発表である。ロシアとの対比で、同じスラブ圏のベラルーシや、中央アジア地域のカザフスタンを対象としたときと同じように、今回の第 3 発表では、アゼルバイジャンにおける子どもの権利条約の国内実施の進行状況について、政府報告書と総括所見などをもとに素描し、他の3 か国との比較を通して、アゼルバイジャンの子どもの権利保護の動向にみられる特徴を明らかにしたい。


14:35-14:50 休憩(15 分) 

14:50-15:30 近況報告(40 分) 


15:30-16:50 「近現代イギリスにおける〈親子分離〉」 

森本真美(神戸女子大学)、並河葉子(神戸市外国語大学) 

ヴィクトリア期イギリスに確立したとされる、外で稼ぐ夫と主婦として家庭を守る妻、両親に慈しまれる子どもという理想の家族モデルは、本来は白人中流階級というごく限定的な階層的価値観を体現したものであった。しかしその影響はイギリス本国の下層階級や帝国植民地の被支配民族、解放奴隷などの周縁的階層にたいしても及び、さらには 20 世紀にいたるまでその命脈を保って、家族の「正しい」在り方のグローバル・スタンダードとして普遍化されてゆく。だが一方で、そのような家族の現実は理想像とは異なり、とりわけ周縁的階層は様々な理由から多くの家族が親子の一方が不在状態となる〈親子分離〉を経験していた。報告は近現代イギリスにおける<親子分離>の実相と、そのありふれた現実が問題視され、正すべき逸脱であり悪弊と位置付けられるにいたった過程を、子どもの権利やジェンダー、エスニシティの視点もふまえて検証する可能性を提起したい。 


16:50-17:00 諸連絡 

17:00 閉会

○日時:2022年3月26日(土) 13 時 30 分〜17 時 00 分 

○場所:東京+オンラインのハイブリッド

○対面会場:グレッグ外国語専門学校自由が丘校(東京都目黒区自由が丘 1 丁目 16-6) 


○プログラム 

13:30-35 開催挨拶 

13:35-14:20 佐藤哲也(宮城教育大学) 

 「キリスト教教育のアクチュアリティー -子ども受難の時代に立ち向かうために-」 


14:20-14:45 休憩 

14:45-16:45 北本正章先生新刊書『子ども観と教育の歴史図像学』(新曜社、2021年) 合評会 

 コメンテーター: 伊藤敬佑(白百合女子大学非常勤講師) 

          稲井智義(北海道教育大学) 

                           宮本健市郎(関西学院大学) 

16:45-17:00 諸連絡

17:00 閉会

■ 日時 2021 年 9 月 18 日(土)13:00-17:00(オンライン) 


■ プログラム 13:00 開会 

13:05-13:45 「独立後のアゼルバイジャン共和国の人口動態と子どもの権利(1)」 

 村知稔三(青山学院女子短期大学) 

 旧ソ連諸国の 5 つの地域のうち、バルト地域を除いた 4 つの地域から 1 か国ずつを選んで、子どもの権利と保育・福祉の実態に関する比較研究を行なうという計画の最後の対象国として、南コーカサス(ロシア語でザカフカース)地域 3 か国のひとつ、アゼルバイジャン共和国を取り上げた発表である。ロシアとの対比で、同じスラブ圏のベラルーシや、中央アジア地域のカザフスタンを対象としたときと同じように、今回の第 1 発表では、アゼルバイジャンの歴史と現状の概要と人口動態の特徴をまとめる。北海道よりも一回り大きな国土に約 1000 万人が暮らす親日国アゼルバイジャンでは、この30 年ほどの間、ヘイダル親子が大統領職にある。その下で子どもはどう育ち、遊び、学んでいるのか、その権利はどう保護・保障されているのか、という問題の外枠を少しだけ明らかにしたい。

 13:45-14:00 休憩


14:00-16:30 シンデレラ譚シンポジウム 

伊藤 敬佑(白百合女子大学非常勤講師)

金子 真奈美(横浜商科大学)

鈴木 明日見(駒澤大学非常勤講師) 

 2021 年度秋の例会にて行う予定の「シンデレラ・シンポジウム」では、発表者三名が シンデレラ譚を通して〈子ども〉(家族や児童文化、児童文学を含む)を捉えることを目 指す。シンデレラ譚は長期にわたり、世相を反映しながら大人のみならず子どもに向け ても繰り返し語られてきたため、〈子ども〉を考察するには恰好の題材のひとつである と考える。鈴木明日見は Aschenputtel (Grimm, 1812) を分析し、近代的な国家・社会・ 家族を創造するために理想とされた姿や、その理想形成のために童話が果たした役割を 明らかにする。伊藤敬佑は Cendrillon (Perrault, 1697) の形式・表現方法の変遷、及び それを取り巻く言説を調査することによって、フランスにおける〈子ども〉がいつ頃か ら読者として意識されたのかを突き止める。金子真奈美は Cinderella (Cendrillon の英 訳)と The History of Little Goody Two-Shoes (Newbery, 1765)を比較検討することに より、Cinderella 的物語である The History of Little Goody Two-Shoes が児童文学の 黎明期においてランドマーク的な地位を獲得したことの時代的意義を探る。 


16:30-17:00 諸連絡 

17:00 閉会

■ 日時 3 月 20 日(土)13:00-17:00(オンライン開催)


■ プログラム 

13:00     開始

13:05-13:50  『世界子ども学大事典』 ガイドブックシリーズ第 2 弾企画説明

       編集委員会

13:50-14:00  休憩 

14:00-14:45  シンデレラ譚・シンポジウム進捗報告

       金子真奈美(横浜商科大学特任講師) 

       伊藤敬佑(白百合女子大学非常勤講師) 

       鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師)

14:45-15:00  休憩

15:00-16:30  太田明先生(玉川大学文学部国語教育学科教授)ご退職記念講義 

      「ヴァルケミューレ田園教育舎と〈ソクラテス的方法〉」

16:30-16:45  質疑応答

16:45-17:00  諸連絡

17:00     閉会


*次回の例会は、9月18日(土曜)の予定です。

2020年9月19日(土)15:00-17:30(オンライン開催)


プログラム 

14:45- 接続 

15:00-05 開会 


15:05-15:50 伊藤敬佑先生報告 「現代フランス児童文学に描かれた「子どもの貧困」」  

昨今フランスでは、「黄色いベスト」運動により、新自由主義社会における経済的格差の問題が、改めて取りざたされている。子どもに目を向けると、特にひとり親家庭の増加を背景に、人口全体における割合(14%)よりも多い5人に1人が「貧困」にあるとされ、「貧困の再生産」の対策が叫ばれている。 一方児童文学でも、「子どもの貧困」を描く作品が少なからず出版されている。だが、その歴史を追うと、その描き方は、第二次世界大戦後の一定期間と、あまり西欧諸国を舞台に「子どもの貧困」が描かれなくなった1980年代の例外的作品、そして2000年代に入り再びこのテーマを描く作品が増加し始めてからの3つの時期で、大きく異なっている。 今回の発表では、第二次世界大戦後のフランス児童文学における、「子どもの貧困」の描かれ方の変遷を追いつつ、現実の貧困状況の議論と対照しながら整理していく。このテーマを考える論点を明らかにするとともに、「子どもの貧困」を描く児童文学の意義を考えたい。 

15:50-16:00 休憩 

16:00-16:30 自己紹介、近況報告  


16:30-17:15 村知稔三先生報告 「独立後のカザフスタン共和国の人口動態と子どもの権利(2)―乳幼児と保育をめぐる現状―」

 カザフスタンの子ども学研究の第2報に当たる本発表は、同国の乳幼児と保育をめぐる現状の特徴と課題に着目して、次の点を明らかにした。 1)出生数は1980年代後半まで増加傾向にあった。それが同年代末から1990年代末にかけて急速に減少し、ピーク時の半分ほどの22万人まで落ち込んだ。その後、出生数は増加に転じ、2006年に30万人を超え、2016年に40万人に達している。2006年以降をベビーブーム期と呼ぶと、それが10数年間、続いている。その結果、乳幼児人口と子ども人口は急増し、多子社会が到来している。 2)教育・保育法制は憲法(1993年)と新教育法(2007年)にもとづいており、そこでは保育制度が教育制度の第1段階として位置づけられている。保育施設は、1~3歳児対象の「保育=幼稚園」、3~6歳児対象の「幼稚園」という長時間保育を実施するものと、2~4歳児、まれに5歳児を対象に短時間保育を行なう「幼児教育ミニセンター」という3つのタイプが多数を占めている。 保育施設数は、ソ連解体の影響で1990年代に9割近く減少し、2000年の1100園余りで最小となった。その後、2000年代から施設数は回復し、2018年には1万園を超えている。1~6歳児の就園率は2000年代中頃から上昇し、2018年には77%になっている。3~6歳児の就園率は95%に達し、ほぼ完全就園の状態にある。 3)保育内容・方法については、国家基準とそれに準拠した単一の保育プログラムが保育現場に適用されている。欧州高等教育圏に2010年に参加したため、初等・中等教育の11年制から12年制への移行と、教育の第1段階としての保育の幼児教育化が進んでいる。保育者は、4割ほどが専門教育を受けており、6割ほどが高等教育を修了している。これらの割合を引き上げることが課題となっている。 


17:15-17:30 諸連絡 

17:30 閉会 

■日時 2019 年 9 月 28 日 (土曜日) 14:00–18:00 

■場所 青山学院大学 総研ビル (14 号館) 5 階 14509 号室 

(渋谷区渋谷 4-4-25  地下鉄「表参道駅」から徒歩 5 分/ JR「渋谷駅」から徒歩 15 分)


発表プログラム (*時間枠は 1 セクション:発表 30 分、質疑応答 15 分、合計 45 分) 

14:00 〈開会〉 

14:05–14:50  保育絵本をめぐる母役割についての史的考察 —1960 年代の『ひかりのくに』を手がかりとして 

井岡瑞日(大阪総合保育大学)

 ■ 高度経済成長期の真っ只中にあった 1960 年代、ブーム前夜にあった絵本はどのように消費されたのか。また、それは子育てや施設保育の現実の変容とどのように相関しあっていたのか。これらの問いに迫るために報告者が着眼したのが、第二次世界大戦直後から創刊・復刊が相次いだ月刊の保育絵本である。幼稚園・保育所への直販により全国的に広く普及した保育絵本は、出版社から園へ、園から家庭(の母親)へと至る一直線の流通システム上に成り立つがゆえ、異なる 3 つの立場にある大人たちの期待や思惑を可視化しやすい媒体であるといえる。本報告では、これら 3 者の間に形成される社会関係に留意しつつ、保育絵本『ひかりのくに』において、子どもの母親にいかなる役割が求められたのかを明らかにする。一連の分析を通じて、人間形成史の文脈において保育絵本が果たした役割について検討する。


14:55–15:40 ソクラテス的対話から見た「子どもの哲学」

太田明 (玉川大学) 

■ 2019 年 8 月2日– 7 日、ソクラテス的対話の研究ブループ (GSP, SFCP)の国際会議・ワークショップが(ハノーファー・ドイツ)開催された。この国際会議については以前に本研究例会で報告したことがあるが、今回の会議・ワークショップの様子を簡単に紹介する。 また、この会議の直前に、「子どもの哲学」に関する研究論文に対するコメントを求められ、ソクラテス的対話の観点からコメントした。このコメントをもとに、「子どもの哲学」は「大人の哲学」とどう違うのかを中心にして、ソクラテス的対話が考える「子どもの哲学」について考察する。


15:40–16:00 〈休憩〉 

16:00–16:20 〈自己紹介、業績紹介〉 

16:20–16:50 シンポジウム企画:シンデレラ譚にみる比較文化 

金子真奈美(横浜商科大学特任講師)、鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師) 

■ シンデレラ譚は非常に有名なおとぎ話の一つであり、東南アジア、東アジア、インド、アフリカ、ヨーロッパなどほぼ世界中に存在する。ヨーロッパにおいても、数百のバージョンがある。2020 年秋の第 26 回研究例会にて開催予定の本シンポジウムは、全世界におけるシンデレラ譚を児童文学、歴史学、教育学、哲学、社会学など多様な分野から比較し、その取り上げ方や文化的意義を明らかにするものである。本報告ではその企画構想を紹介し、発表者およびコメンテーターを募りたい。


16:50–17:30 独立後のカザフスタン共和国の人口動態と子どもの権利 (1) 

村知稔三 (青山学院女子短大) 

■ 本発表は、ソ連解体後のロシアとの比較を念頭に、その南隣に位置するカザフスタンの子どもの権利について概観する第 1 報である。具体的には、1991 年末の独立から約 30 年間の同国の動向を整理し (第 1 節)、関連する先行研究と利用する資料について述べ (第 2 節)、人口動態の特徴をまとめた (第 3 節)。その結果、次の点が明らかになった。体制転換の型として「政治的権威主義」「急進的市場経済化」に区分される同国は、中央アジア 5 か国の中では珍しく、一人当たり GDP も 1 万ドルの壁を越え、格差も小さく、貧困率も低下しており、子どもとその家族の状態の改善や子どもの権利保護を進めるうえで好条件を備えている。また、社会における子どもの位置は量的・質的に比重を増しており、その権利の保護と保障が社会の今後を左右する問題となっている。 


17:30–18:00 〈諸連絡〉 

18:00 〈閉会〉

■日時 2019 年 3 月 23 日 (土曜日)   13:00–17:00 

■場所 青山学院女子短期大学本館 3 階大会議室


■発表プログラム

13:00 〈開会〉

 

13:05–13:50

ベラルーシ共和国の人口動態・保育の特徴と子どもの権利の実態 (3) ——乳幼児と保育の現状——

村知念三(青山学院短期大学)

■ ソ連解体後のロシアとの比較を念頭に、その隣国ベラルーシの子どもの実態について概観する表題の連続 発表の第 1 報 (第 19 回例会) では、同国の人口動態の特徴にふれ、第 2 報 (第 22 回例会) では、乳幼児と保育 の現状を紹介した。第 3 報となる今回は、ソ連末期の 1990 年に批准した子どもの権利条約に関するベラルーシ 政府の報告書とそれに対する国連子どもの権利権利委員会の総括所見の双方の第 1 回 (1994 年)、第 2 回 (2002 年)、第 3・4 回 (2011 年) を分析することで、1990 年代〜2000 年代の同国における子どもの権利の実態とその 保障の動向について概観してみたい。


13:50–14:35

『灰かぶり (Aschenputtel)』にみるゲルマンの家族

鈴木明日見 (駒澤大学非常勤講師)

■ 『シンデレラ』はメルヘンのなかでは非常に有名な作品であり、欧米、古代エジプト、西南アジア、インド、 東アジア、南北アメリカなど、世界中のほとんどの地域に存在する。さらにヨーロッパだけでも 500 以上のバー ジョンがみられる。

本報告では、ドイツのシンデレラ「灰かぶり」『グリム童話集』1812(初版) ー 1857 年 (第 7 版) を他の『シン デレラ』と比較し、その差異を明らかにする。それにより、ゲルマン社会に形成された家族が、近代においてど のように残存していたのか、また変容していのか、考察していきたい。


14:35–14:45 〈休憩〉 


15:00–15:45

ギヨーム・ゲロ『獲物にはならない』における「殺人的暴力」 —思春期文学はどこまで暴力を描けるか

伊藤敬佑(白百合女子大学非常勤講師)

■ 本発表では、フランスの思春期向け小説『獲物にはならない』(ギヨーム・ゲロ、2006、未訳)に描かれた 「殺人的暴力」の分析を通じ、思春期の若者を主対象とする文学ジャンルにおける「暴力」の位置付けの検討を 行う。 同作は、高校生の主人公が、兄の結婚式の日に兄と花嫁を含む 5 人を殺害するという、衝撃的な作品 である。フランスでは日本と異なり、暴力を描いたノワール作品が、思春期向け作品でも 21 世紀になって台頭 しており、この作品はその代表的作品である。暴力自体も、描かれることが稀な児童文学と、頻出する思春期文 学を峻別する際の、重要な観点だろう。 だがこの論点は、日本では話題となることすら稀である。フランスで も、同作をはじめ、暴力的な作品が強く批判されることも多いが、その際に出版側からの反論はあるものの文学的な研究は少なく、多くの疑問が残されている。作品分析を通じ、この論点を少しでも前進させたい。


15:45–16:00 〈休憩〉 


16:00–16:45

オアフ島(ハワイ州)における p4c(Philosophy for Children) 〜その思想と実践を探る〜

佐藤哲也(宮城教育大学)

■ 2019 年1月21日(金)から28日(月)まで、公益財団法人上廣倫理財団の助成金と宮城教育大学上廣倫 理教育教育アカデミー・ハワイ大学上廣哲学倫理教育アカデミーの支援を得て、ハワイ州オアフ島を訪問した。 ホノルルを起点に、ワイキキ、サンセットビーチ、カイルワ、ワイマナロの幼稚園、小学校、中学校、高等学校 を訪問し、p4c(philosophy for children)の実践を参観した。マシュー・リップマンの取り組み(1970 年代)に端を発した“p4c”は、トーマス・ジャクソンによってハワイにもたらされ(1984)、今日まで独自の発展を遂 げている。本報告では、ハワイにおける p4c の概要を紹介し、その子ども観や教育思想を探りながら、実践とし ての可能性について言及する。

■日時 2018 年 9 月 22 日 (土曜日) 14:00–17:30 

■場所 青山学院大学総合研究ビル(正門を入ってすぐ右の建物)8 階第 11 会議室


■発表プログラム

14:00 〈開会〉 


14:05–14:50 

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』の再考 ——梨木香歩『僕は、そして僕たちはどう生きるか』との比較——

劉冠玟 (白百合女子大学文学研究科児童文学専攻博士課程後期)

■ 『君たちはどう生きるか』(新潮社、1937 年)は 80 年前に出版されたが、2017 年 8 月に漫画化されたとで、 原作である当書も 2017 年の話題作となり、再び注目されている。しかし、『君たちはどう生きるか』がこのよう に再び脚光を浴びる前に、児童文学作家の梨木香歩がいち早く、2011 年に当書をモチーフに『僕は、そして僕 たちはどう生きるか』(理論社、2011 年)を創作した。これは「現代版『君たちはどう生きるか』」と呼ばれたこ ともあるが、両作品を同時に取り上げて論じる研究は数少ない。 したがって、本発表では、『君たちはどう生きるか』と『僕は、そして僕たちはどう生きるか』を対象に考察す る。まずは、両作品にみられる物語の構成や表現の特徴などを比較しながらテクストを分析する。さらに、両作 1 品のテクスト分析に基づき、それぞれが創作された当時の社会背景なども考察し、作者たちの創作意図を解明す る上に、『君たちはどう生きるか』の現代的意義を再考する。 


14:55–15:10 〈休憩〉 


15:10–15:55 

家庭における礼儀作法教育の歴史—19 世紀末フランスの女性誌を手がかりとして

井岡瑞日(大阪総合保育大学講師) 

■ フランスにおいて、19 世紀は礼儀作法がブルジョワジーの処世術として重視され、礼儀作法書が数多く刊 行された時代である。とりわけ女性向け礼儀作法書が飛躍的発展を遂げる 1860 年代以降は、子どもに礼儀正し さを身につけさせることを母親の責務だとする見方が広まっていったと考えられる。本報告は、礼儀作法書の熱 心な愛読者層であった小ブルジョワジーの家庭で、子どもに礼儀作法を教えることの重要性がどの程度認識さ れ、その目的や意義がどのように考えられていたかを明らかにするものである。このことを通して、当該時期の 礼儀作法教育の特質をその歴史全体の中に位置づけて検討するとともに、拡大の途上にあった小ブルジョワジー にどのような家庭教育モデルが受容されつつあったのかについてもあわせて考察してみたい。なお、史料とし て、1879 年の初刊以降、小ブルジョワジーの主婦に多大な人気を博していった女性週刊誌 Le Petit Echo de la Mode に着目する。 


15:55–16:10 〈休憩〉 


16:10–16:55 

ベラルーシ共和国の人口動態・保育の特徴と子どもの権利の実態 (2) ――乳幼児と保育の現状――

村知稔三 (青山学院女子短期大学) 

 ■ 本発表は、第 19 回研究例会 (2017 年 9 月) の同名の発表 (1)(仮題「ベラルーシ共和国の人口動態の特徴」) の続報として、「乳幼児と保育の現状」について論じるものである。当日は、最初に前回のまとめにふれたあと、 1) 乳幼児の誕生と生活、2) 教育制度と保育施設網、3) 保育内容・方法と保育者養成の順に述べていきたい。ベ ラルーシでは主な就園対象である 3〜5 歳児の就園率は 95 %を超えている。そのため、同国の保育界の中心的 な課題は、量的な拡充というよりも、高等教育機関における保育者養成の主流化や、一定水準を超えた多様な保 育プログラムの検討・普及などの質的な整備に置かれている、といった点について報告したい。