第23回研究例会

■日時 2019 年 3 月 23 日 (土曜日)   13:00–17:00 

■場所 青山学院女子短期大学本館 3 階大会議室


■発表プログラム

13:00 〈開会〉

 

13:05–13:50

ベラルーシ共和国の人口動態・保育の特徴と子どもの権利の実態 (3) ——乳幼児と保育の現状——

村知念三(青山学院短期大学)

■ ソ連解体後のロシアとの比較を念頭に、その隣国ベラルーシの子どもの実態について概観する表題の連続 発表の第 1 報 (第 19 回例会) では、同国の人口動態の特徴にふれ、第 2 報 (第 22 回例会) では、乳幼児と保育 の現状を紹介した。第 3 報となる今回は、ソ連末期の 1990 年に批准した子どもの権利条約に関するベラルーシ 政府の報告書とそれに対する国連子どもの権利権利委員会の総括所見の双方の第 1 回 (1994 年)、第 2 回 (2002 年)、第 3・4 回 (2011 年) を分析することで、1990 年代〜2000 年代の同国における子どもの権利の実態とその 保障の動向について概観してみたい。


13:50–14:35

『灰かぶり (Aschenputtel)』にみるゲルマンの家族

鈴木明日見 (駒澤大学非常勤講師)

■ 『シンデレラ』はメルヘンのなかでは非常に有名な作品であり、欧米、古代エジプト、西南アジア、インド、 東アジア、南北アメリカなど、世界中のほとんどの地域に存在する。さらにヨーロッパだけでも 500 以上のバー ジョンがみられる。

本報告では、ドイツのシンデレラ「灰かぶり」『グリム童話集』1812(初版) ー 1857 年 (第 7 版) を他の『シン デレラ』と比較し、その差異を明らかにする。それにより、ゲルマン社会に形成された家族が、近代においてど のように残存していたのか、また変容していのか、考察していきたい。


14:35–14:45 〈休憩〉 


15:00–15:45

ギヨーム・ゲロ『獲物にはならない』における「殺人的暴力」 —思春期文学はどこまで暴力を描けるか

伊藤敬佑(白百合女子大学非常勤講師)

■ 本発表では、フランスの思春期向け小説『獲物にはならない』(ギヨーム・ゲロ、2006、未訳)に描かれた 「殺人的暴力」の分析を通じ、思春期の若者を主対象とする文学ジャンルにおける「暴力」の位置付けの検討を 行う。 同作は、高校生の主人公が、兄の結婚式の日に兄と花嫁を含む 5 人を殺害するという、衝撃的な作品 である。フランスでは日本と異なり、暴力を描いたノワール作品が、思春期向け作品でも 21 世紀になって台頭 しており、この作品はその代表的作品である。暴力自体も、描かれることが稀な児童文学と、頻出する思春期文 学を峻別する際の、重要な観点だろう。 だがこの論点は、日本では話題となることすら稀である。フランスで も、同作をはじめ、暴力的な作品が強く批判されることも多いが、その際に出版側からの反論はあるものの文学的な研究は少なく、多くの疑問が残されている。作品分析を通じ、この論点を少しでも前進させたい。


15:45–16:00 〈休憩〉 


16:00–16:45

オアフ島(ハワイ州)における p4c(Philosophy for Children) 〜その思想と実践を探る〜

佐藤哲也(宮城教育大学)

■ 2019 年1月21日(金)から28日(月)まで、公益財団法人上廣倫理財団の助成金と宮城教育大学上廣倫 理教育教育アカデミー・ハワイ大学上廣哲学倫理教育アカデミーの支援を得て、ハワイ州オアフ島を訪問した。 ホノルルを起点に、ワイキキ、サンセットビーチ、カイルワ、ワイマナロの幼稚園、小学校、中学校、高等学校 を訪問し、p4c(philosophy for children)の実践を参観した。マシュー・リップマンの取り組み(1970 年代)に端を発した“p4c”は、トーマス・ジャクソンによってハワイにもたらされ(1984)、今日まで独自の発展を遂 げている。本報告では、ハワイにおける p4c の概要を紹介し、その子ども観や教育思想を探りながら、実践とし ての可能性について言及する。

世界子ども学研究会

世界子ども学研究会は、「世界各地の社会・歴史・文化の中の、子どもと青年」を研究対象とした研究会として、2009年にスタートしました。歴史学・教育学・保育学・発達社会学・(児童)文学・音楽学などの諸分野間での、グローバルな学術交流を行なっています。本研究会にご関心のある方は、以下のアドレスまでメールでご連絡ください。 office-children(アットマーク)freeml.com