第31回研究例会

日時:9 月 2 日(土)10:00-17:00

会場:池袋


10:00-10:05 開始

10:05-14:00 第一部 研究発表(発表時間 25 分、質疑応答 15 分)

村知 稔三(青山学院大学教育人間科学部客員教授 )

「独立後のカザフスタン共和国の人口動態と子どもの権利(3)

――代替的(社会的)養護の規定と実態を中心に――」

本発表は、中央アジアのカザフスタン共和国における子どもの権利と保育・教育・福祉の実態に関する一連の研究発表の 3 回目であり、副題にある代替的(社会的)養護(※)を取り上げる。その構成は次の予定である。「はじめに」で、課題の限定や利用する資料などについて説明し、第 1 節で、国際的な代替的養護の区分と定義、カザフスタンの制度と法的規定について説明する。第 2 節では、代替的養護の量的推移を概観し、第 3 節では、代替的養護の実態と課題について考察し、「おわりに」で全体をまとめる。ただ、諸事情による準備不足によって、今回は、発表としては例外的に、全部をお話しできないかもしれない点をあらかじめご理解いただきたい。

(※)保護者がいなかったり、養育できなかったりする子どもを公的責任で社会的に養育・保護するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行なうこと(こども家庭庁の定義を修正)


鈴木明日見(駒澤大学非常勤講師)

「『グリムドイツ伝説集』にみるランゴバルドの伝説」

近代学校教育が始まる以前、法慣習の子どもへの伝達は、諺、詩、物語などによって行われていた。法慣習や法的象徴行為が子どもへどのように伝達されていたのかを『グリムドイツ伝説集』(第Ⅰ部 初版 1816 年、第Ⅱ部 初版 1818 年)から分析したい。具体的にはグリムが「ドイツ」の伝説の中に組み込んだランゴバルド族の伝説を、パウルス・ディアコヌス 『ランゴバルドの歴史』(790 年前後)やランゴバルド諸法と比較することで、当時のゲルマン史像の一端を明らかにする。そして、そうして形成されたゲルマン像がどのように子ども達に伝えられたのかを検討し、近代学校教育とは異なる伝達行為(特に物語による伝達)が持つ意義についても考察を加えたい。


12:00- 13: 00 昼食

伊藤敬佑(白百合女子大学非常勤講師)

「フランス公教育における絵本・児童文学を用いた 「子どもの哲学」の実践

と可能性」

本発表では、絵本や児童文学を用いた「子どもの哲学」(philosophie pour (les) enfants)のフランスにおける実践状況を、ナント大学教授かつ「子どもの哲学」実践のユネスコ講座も担当するエドウィッジ・シルテ(Edwidge Chirouter)の活動に焦点を当てて報告する。

この活動には、フランスにおける 1990 年代からの「子どもの哲学」の移入と、絵本、児童文学が公教育のカリキュラムに 2002 年に加わったという、2 つの源流がある。まずその 2 つの経緯を整理しつつシルテの立ち位置や独自性を示した上で、彼女がどのように「子どもの哲学」実践に絵本や児童文学を用いているかを明らかにしたい。


14:00-17:00 第二部 稲井智義『子ども福祉施設と教育思想の社会史―石井十次

から冨田象吉、高田慎吾へ』(勁草書房、2022 年)合評会

コメンテーター:板倉孝枝(世界こども学研究会会員)

山口刀也(東北生活文化大学)

井岡瑞日(大阪総合保育大学)


世界子ども学研究会

世界子ども学研究会は、「世界各地の社会・歴史・文化の中の、子どもと青年」を研究対象とした研究会として、2009年にスタートしました。歴史学・教育学・保育学・発達社会学・(児童)文学・音楽学などの諸分野間での、グローバルな学術交流を行なっています。本研究会にご関心のある方は、以下のアドレスまでメールでご連絡ください。 office-children(アットマーク)freeml.com